人口減少下でも成長を続ける町工場の人材戦略
町内4社目の移住支援金対象企業
株式会社メタルプロダクツは、2023年12月に「山形県移住支援金対象求人サイト」に移住支援金の対象企業として登録されました。真室川町内の登録企業として4社目となります。
どのような会社なのか取材し、人口減少下でも成長を続ける理由にも迫ってみました。ご対応いただいたのは生産管理部長の柏倉久美子さんです。
「会社の中だけではなくて、お客様全体から『ありがとう』が集まる会社であり続けたい」
インタビューの一部を動画にまとめました。
記事とあわせてご覧ください!
会社について
株式会社メタルプロダクツは、1965年に「渡辺鉄工所」として新庄市金沢新町で創業し、1997年に「有限会社渡邊鉄工」として法人設立しました。その後、2009年に真室川に移転したタイミングで現在の社名に変更しました。
- どのような事業をされているのでしょうか。
「少量多品種の軽量鉄骨を取り扱うメーカーです」
主要な製品を訊くと、胴縁(どうぶち:壁の下地材)や、母屋(もや:屋根を乗せる垂木を支える部材)といった、「建物が完成すると見えなくなる部分ではあるのですが、建物の建築のなかで使われている鉄骨を色々と取り扱っています」と教えてくださいました。
北海道から関東圏までを商圏に、月間1,000トンの加工能力を持つ全国トップクラスの軽量鉄骨部材メーカーなのだそうです。
人材採用と育成について
新入社員の受入れについて
移住者や海外からの方を受け入れるにあたって、会社に溶け込むために行われていることをお聞きしました。
「移住者の方々は初めての土地なのですごく不安で来ているっていうのは分かります」と理解を示した柏倉さんは、「移住者に限ったことではないのですが」と断りをいれたうえで、新入社員が会社に定着するために取り組まれていることを挙げてくださいました。
- 1.懇親会
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入社した週の週末に、上司や職場のリーダー達と親睦を深めるための懇親会を開催。人間関係の距離を縮めることを目的に、趣味の話しや、それまでにどんなことをされてきたのか等をざっくばらんに話せる機会を意識して設けている。
- 2.歓迎会
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社員全員参加の歓迎会を適宜開催している。新入社員が皆と話をする機会として実施。新庄市内のホテルの宴会場で開催している。
- 3.個人面談
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月に1回、直属の上司との個人面談を実施している。仕事上での不安について聞くこともあれば、スキルアップや資格取得の希望を確認してその実現に向けた話をする機会としている。
- 4.幹部面談
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直属の上司だと言いにくいこともあると思われるため、入社して1か月、3か月、6か月、1年のタイミングでアンケートを実施し、その回答をもとに会社幹部と面談する場を設けている。仕事でのトラブルや相談、私生活の悩みも含めて対話をし、必要があれば幹部が直接対応している。
「なるべく働く環境が理由で離職してしまうことがないように、働きやすい環境を少しずつ良くしていこうと取り組んでいます」と柏倉さん。
キャリアアップについて
仕事へのモチベーションを維持・向上させる要因のひとつに、自身のスキルアップやキャリアアップへの機会があり、目標に向かう道筋が用意されていることが挙げられると思います。目の前の業務が将来につながると思うとやる気がでますよね。メタルプロダクツさんではどのように人材育成に取り組まれているのかお聞きしました。
「新入社員とは、入社してすぐのオリエンテーションで1年間どんなスケジュールで育成を進めていくか計画を立てるようにしています」と柏倉さん。
会社として何か月後にはこうなって欲しいという想いを提示することで、やりがいを感じてもらえればなと思っていますとも話してくださいました。
CAD志望で半年前に入社された中西さんも、1年間は製品のことなどを勉強するために現場で溶接や塗装の仕事をされていましたが、「目標が見えてモチベーションに繋がっている」と話してくださいました。
「『このポジションに就きたい』っていう目標があったとしたら、まずは工場の中の色んな現場を見ていただいたうえでその仕事に就く方が、必要な知識が自然と身に着くと思います。それに、資格取得の際も現場を見てもらったうえで挑戦することで合格率も高くなります。月に一度の上司との個人面談でも、本人のこうなりたいっていうイメージを確かめながら、その実現に向けて会社でも色々とサポートしていくように意識しています。
ありがたいことに最近は若い方が入ってきてくださるようになりました。中西さんもそうですが、そういった方々がCADをやってみたいという風に言ってくれているので、そういうところは本当にありがたいなと思って、大事に今勉強してもらっています」
- 新入社員の受入れと人材育成をとても丁寧に取り組まれていると感じました。
「やはり定着率ということを意識していまして、簡単に辞めたいって思わせてしまっては本人にも申し訳ないですし、会社としてもすごくダメージが大きいです。折角入ってきてくださったからには、会社にうまく馴染んで欲しいっていう気持ちがあります。長く務めていただくことで得られるものが沢山ありますので、そういったチャンスを逃さないようにということで、しっかり育成しサポートするということを強化しています」
住まいについて
- 移住されてくる従業員に対するサポートはあるのでしょうか?
「移住されてくる方が1番不安に思うのは住居なのではないでしょうか。弊社では会社の敷地内に寮を設けており、個室21部屋のほか共同スペースも設けていて、1人ひとりのプライベート空間とコミュニケーションの場をしっかり確保しています。
社員寮の他にも1戸建ての社宅を用意していますので、そこでは家族一緒に移住したい方に提供できるようにしています」
- 中西さんも、寮には全部揃っているのでカバンひとつで寮に入って普通に生活ができたとおっしゃっていました。ちなみに、社員寮や社宅の家賃はどれくらいなのでしょうか?
「弊社では、会社からの距離に関わらず交通手当を一律3万円出しているのですが、その3万円から、水道光熱費やネット代込みの住居費を負担できるようにしていますので、自己負担少なく居住できる環境となっています」
アパートや町営住宅、子育て支援住宅があるものの、移住者が住まいを確保するのは簡単ではなかったりします。家具や家電が揃っている寮があると安心して新しいスタートが切れますね!
中西さんをインタビューした記事はこちら!
人材像について
次に、どんな人材を求めているのかお聞きしたところ、「経験の有無はあまり求めておらず、一番大事に考えているのは人柄です。地元の方とうまくコミュニケーション取れる方がありがたいですし、地域柄、前へ出るタイプが少ない場所でもあるので、アクティブな方や、色々チャレンジしてみたいと積極的な方に来ていただくと、すごく会社も活気がつきます」と返ってきました。
また求職者にとっては、田舎にある会社ということがネックになることもあるそうですが、「田舎暮らしが好きとか興味があるという方であれば全く問題はないかなと思いますし、そういった地域でも住んでみたいなっていう方がいればすごくありがたいです」とお話しいただきました。
- では、雪に対してはどうなのでしょう。「雪さえなければ」と地元でも雪にネガティブな方が少なくありません。
「そうですね。やはりこの辺りに住んでいない方だと降雪量にも驚かれると思いますし、環境的にちょっと大変かなとは思うんですけれども、スノーボードやスキーが好きとか、山が好きとか、そういった方であればすごく良い環境かなとは思います」と柏倉さん。
実際、キャンプが好きという従業員が結構いるそうで、1人キャンプまでされる方もいらっしゃるそうですよ。
地域との関わりについて
メタルプロダクツの地域社会との関係構築のために取り組まれていることをお聞きしました。
「真室川町の色々なイベント行事に参加させていただいています。弊社従業員の移住者や海外からの方々にも、 花火大会や雪のイベントなどにお声がけいただけるので、そういったところで地域の活動にもうまく企業として参加しているかなと思っています」
- 色んなイベントに協賛いただいています。
「従業員の有志で花火の協賛金を集めていまして、大きな花火ではないんですけど、その花火が上がるのを見るのが楽しいんです。会社では会社であげて、自分たちも折角なのでって有志で花火を上げることを何年か続けていまして、それが上がるのをただ見るだけなのですが良い思い出づくりになっています」
真室川の花火大会は、観覧席と花火の距離が近いこともあり、「素朴な花火大会だけど迫力あるよね」と毎年欠かさずに観に来てくださる方も少なくありません。花火大会を継続して開催していくのも大変になってくると思いますが、こうしたサポートや想いがあって続けられているのかなと思いました。
働きやすい職場づくり
続いて、会社として取り組まれている「働きやすい職場づくり」についてお聞きしました。
「物作りの会社なので、工場内は当然夏場であれば暑いですし、冬はすごく寒くて環境的にはすごく大変なのかなと思います。そういったことへの対策として、会社としてできることをどんどん進めているところです。
たとえば、夏場には空調服を支給していますし、冬場はジェットヒーターを設置しています。作業服は年に2回支給していて自分で買う必要がないので、その分防寒部は各自で揃えて仕事ができる環境になっています」
更に柏倉さんは、女性にとっても働きやすい職場づくりを目指していると教えてくださいました。
「今、女性の働きやすい職場づくりを意識しています。事務所の中はほぼ女性っていう状況まで来ていますが、工場でも、男性だけじゃなく女性でも働ける環境を作って、女性にも選んでもらえる職場にしていこうと取組みを始めたところです。本当に最近で、この2月に『ものづくり女子』というプロジェクトを立ち上げました。弊社のホームページにも掲載しているのですが、モノづくりや田舎暮らしに興味のある女性に観ていただいて、鉄骨でモノを作るっていうことにちょっとでも興味を持っていただければ見学に来ていただいて、少しずつ「ものづくり女子」を増やしていきたいなと思っています」
- 女性にも働きやすい職場作りとは具体的にどういうことでしょうか?
「今は工場には男性しかいませんので、そこに女性が入ることを考えると、更衣室や休憩所、トイレといった環境整備が課題としてあります。まずそこはひとつひとつ潰していこうということで、トイレは女性も使う仕様のものに換えています。更衣室や休憩場所についても、女性スタッフが入った時にはここを使いましょうっていうことを決めて用意しているところです」
- 事務所はほぼほぼ女性ということですけども、子育て中の方とかもいらっしゃるのかなと思いますが、そういった部分のサポートや職場作りはいかがでしょうか?
「やはり子育て世代の方が多くて、今も2名が産休中です。やはり女性ですと、子育てをしていると色々な事情があるのは分かりますので、取り組みとしては時間休、有給休暇を時間で使うことを可能にしています。また、女性が多いからこそ職場のなかで助け合いができていますし、今年から年間休日を120日に大きく拡充しましたので、家庭のために使える時間の確保がより容易になりました。仕事と家庭の両立っていうところに関してはサポートしている会社体制なのかなと思っています」
今は事務所に在籍している女性スタッフが、合間合間に製品に付けるタグの刻印に取り組まれているそうです。「ものづくり女子」が集まることで、性別に関係なく誰であっても働きやすい職場ができるといいですね!
「ものづくり女子」の専用ページも用意されています。取組みや求人に興味を持たれた方はぜひご覧ください。
採用面接の前に行っていること(ミスマッチの防止について)
次に、採用プロセスにおいて工夫していることをお聞きしました。
「会社見学に力を入れています。やはり実際に見ていただかないとミスマッチになってしまうと思っていますので、まずは気軽に見学だけでも来ていただけるようにしています。工場での作業の様子や会社の雰囲気を見ていただいて、会社説明などお話ししたうえで面接に進みたいと言っていただけるのであれば来ていただくという流れを作っています」
採用ページを増やしたこともあり、昨年ごろから面接を希望される方が大幅に増えていると教えてくださいました。これまでの取り組みが実を結んできているのかもしれませんね。
会社の将来ビジョンについて
最後に、会社の将来的なビジョンについても訊いてみました。
「真室川町において、地域の中でも優良企業と言われる会社であり続けたいということと、お客様だけではなくて従業員も含めて「ありがとう」という言葉が集まる会社で居続けたいと思っています」と力強く話してくださいました。
特に人口減少の著しい農山村において、従業員の確保は企業の存続にかかわる大きな課題として顕在化しています。そうした状況のなかでも、積極的に人材確保に取り組まれている企業として株式会社メタルプロダクツを紹介させていただきました。
同様の取り組みが広がり、移住地としても選ばれる地域になっていくことを願ってやみません。
株式会社メタルプロダクツ
山形県最上郡真室川町大字平岡432
同社の情報は公式ホームページでもご覧いただけます。
山形県移住支援金対象求人サイトに掲載中の求人情報はこちら。
真室川町の移住支援金対象企業情報
有限会社高菊林業
業種:林業
真室川町大字差首鍋1535-1
株式会社庄司製材所
業種:製材業
真室川町大字大滝108-2
※2024年3月現在で、山形県移住支援金対象求人サイトに求人情報を掲載している真室川町内の企業は、(株)メタルプロダクツを含めて3社です。
(動画制作:家崎耕平)
(インタビューと文章:梶村勢至)