「みんなで楽しく」を未来につなげる人たち:動く灯篭製作委員会
「真室川での暮らしを楽しんでいる人」の紹介企画、第二弾。
今回ご登場いただくのは、『動く灯篭製作委員会』の黒坂 啓(ひらく)さんと小野 良さん。「みんなで楽しく」を未来につなげる人たちです!
有志の方々が集まる『動く灯篭製作委員会』では、真室川まつりに披露する動く灯篭を製作しています。
動く灯篭製作委員会の紹介動画はこちら
動く灯篭とは
毎年8月17日に開催される真室川まつり。その真室川まつりにあわせて、手作りの灯篭が町を巡行します。その歴史は、かれこれ40年以上!
かつては青年団や消防団の集まりが元になって、あちらこちらで作られていたそうですが、今は黒坂啓さん率いる『動く灯篭製作委員会』が作るだけになってしまいました。
黒坂さんが子どもだった頃は、黒坂さんのお父さんがリーダーになって灯篭を作っていたそうです。
そのお父さんが亡くなられた後は、地区の消防団が製作を引き継ぐことになったそうです。しかし、消防団の分団長が代替わりしたことが切っ掛けとなって製作が途絶えてしまい、真室川から動く灯篭の灯が落ちてしまいました。誰かが何とかしなければ!と思って、動く灯篭製作を始めたそうです。
祭りが面白くなくては誰も真室川に来ないべや
だから祭を盛り上げるために動く灯篭を作り続けているんだ
動く灯篭の作り方
取材にお伺いしたとき、大勢の方が集まって骨組みに布を張り付けているところでした。
これは何になるんだろう?と、作業をしている人に仕上がりについて尋ねてみました。
すると、驚きの言葉が返ってきました。
「分かりません(笑)」
設計図などは一切なく、黒坂さんの頭の中で構造ができあがっていて、布を張り付けていくうちに何の形だかわかってくるんだとか。
「啓は元々絵を描くのが好きで、とても上手だったから」と同級生の小野さんが教えてくれました。そして、何が出来上がってくるのか楽しみなので、誰も何が完成するのか訊くこともなく淡々と作業が進んでいくのだそうです。
みんなを率いる黒坂さんの作業を眺めていると、まるで流れるような手さばきで仕上がっていきます。誰から作り方を教わったのかな?と思っていたら、それを見透かしたように「ぜんぶYouTubeで学びました。独学です!」と笑いながら教えてくれました。
どんなものでもYouTubeで学べるとは聞いていましたが、まさかこんなものまで作り方が学べて、しかも実行してしまうなんて!
14、5年作り続けた成果とは
「みんなで楽しいことをやりたい」と集まってきた人たちは、下は19歳から上は40代まで、とても年齢に幅がありました。
消防団つながりで参加した人や、黒坂さんの同級生だからという人、はたまたUターンで帰ってきて地元のために何かしたいという人、そして黒坂さんの息子さんの同級生まで!
「子どもたちの世代が手伝うようになったことが、14,5年続けてきた成果と言えるかもしれない」と小野さんは仰います。
あちこちで様々な行事が縮小されていく中で、灯篭製作のメンバーは拡大傾向にあるそうです。その理由は、楽しいことをやっているお父さんの背中を子どもに見せ続けてきたからかもしれません。
2022年の動く灯篭のテーマは桃太郎でしたが、以前は有名なアニメキャラクターなども作っていたそうです。それもこれも、子どもたちに見てもらって「祭は楽しいものなんだ!」ということを知ってほしいという願いがあったからなのかもしれません。
動く灯篭づくりへのこだわり
動く灯篭を、ゆくゆくは真室川まつりのメインイベントにしたい、と野望を語る小野さんと黒坂さん。
だから動く灯篭をどうしたら多くの人に見てもらえるかと研究を重ねることに余念がありません。
たとえば「自分たちの作った灯篭と青森のねぶたの違い何だろう?」と考えながら試行錯誤し、ライトアップしたときにきれいに光るにはどうしたらいいのか、どう作ったら丸みをもたせられるのか、ひとつひとつ解決しながら6年前に今の作り方にたどり着いたそうです。
さらに、灯篭が町内を巡行するときにもっと「お祭り感」を演出したいという思いから、2018年から真室川の釜渕地区に伝わる「釜淵囃子」の協力を得て、賑やかなお囃子と共に巡行しています。
確かに、太鼓とお囃子が聞こえてくるとお祭りだな、と感じますよね。
毎年何かしらのアップデート(向上)がある動く灯篭に、町の人たちが驚いている様子が想像できます。
動く灯篭の目的は「楽しさ」を多くの人に届けること
灯篭づくりを続ける目的はと訊くと、「お祭りそのものを盛り上げて楽しんでもらいたいのと、自分たちも楽しみたい」というのとあわせて「仲間を増やしたいから」という声も返ってきました。
「灯篭づくりは、自治会や集落の集まりとか祭のための準備ではなく、みんなでやる趣味のようなもの」
そう語ってくれる方もいました。
義務感は一切ないし、行けば楽しい時間を過ごせる。
もし作業に没頭したければ、それも全然かまわない。
そうした場の雰囲気に少しずつ人が集まってきて、始まりは数人だったメンバーも、今では20人を越える人たちが関わっているとか。
下の世代にもきちんと届けること
「昔からずっと続いてきた灯篭づくりだから、これからも世代交代しながらずーっと続けていきたい」と黒坂さんも小野さんも話してくれました。「それが大きな目標なんです」
地元にみんなが協力して楽しんでいるお祭りがあれば、たとえ都会に出たってその時期だけでも帰りたいと思うんじゃないかな。それがUターンのキッカケになるかもしれないし、そうなればいいな!
更に、灯篭づくりに子ども連れで参加してくれれば、大勢で集まる楽しさやものづくりの感動が子どもにも伝わって…と自然と下の世代にもつながっていくよね?と夢は膨らみます。
ただ自分たちが「楽しい」ことをしているだけでなく、下の世代への眼差しももちながら毎年作り続けているのですね。
動く灯篭づくりに参加するには
作り手にも、曳く人にも、観る人にも「楽しいお祭り」を届ける動く灯篭は、冬が終わって少し暖かくなってきた5月頃から、人手を集めて灯篭づくりが始まります。
(冬の間は、黒坂さんの頭の中での設計づくりから始まり、家の中でも作れる小さなパーツから少しづつ作られていくのだそうです)
とはいっても、皆さんそれぞれお仕事をされているので、仕事から帰ってひと休みした19時過ぎからぽつぽつと集まりはじめ、その日参加できる人だけで作業を進めます。
自由に来て、自由に帰ってよく、一切強制ナシ!という制作現場は、いつも笑い声が絶えません。
頻繁に参加する人もいれば、たまに参加する人、土日だけ参加する人や、飲み会の前にチョットだけ参加する人など、皆さんそれぞれのスタイルで参加されているそうです。はじめての人もこれだと参加しやすいですよね。
自由な雰囲気のなかでみんなで作って、みんなでしゃべって、みんなで感動する。
これが参加者を増やしている理由のように思います。
町内に限らず、町外からの参加者も募集しています
『動く灯篭製作委員会』では、町内町外問わず、灯篭づくりを手伝ってくれる人や、お祭り当日に一緒に灯篭を曳いてくれる人を募集しています。
それだけでなく、「他のマチから自分たちの灯篭をもってきてくれる人がいれば最高だにゃぁ!」だそうですよ。固定概念の枠にしばられず色々なところから色々な方法で参加してくれたら嬉しいと話してくれました。
『動く灯篭製作委員会』は、雪国の短い夏を彩る夏祭りの一瞬に向けて、人の輪を上下左右に拡げながら、みんなの「楽しい!」気持ちを創っていました。
インスタグラムをCheck!
灯篭づくり(5月~8月中旬)に参加したり、
真室川まつりで灯篭を曳くこともできます。
参加してみたい方は、ぜひご連絡くださいね。
今後も、まむろ暮らしを楽しんでいる人を紹介していきます
真室川での暮らしを楽しんでいる人を紹介する本稿はいかがでしたか?
今後も「まむろ暮らし」では、小さな町だからこそ繋がれる人を通じて、真室川のことを紹介していきたいと思っています。
移住や定住には、自分がやりたい実現したいと思っていることを教えてくれる先輩や、実現に向けて取り組んでいる仲間と繋がれることも大事です。
「真室川に〇〇な人はいませんか?」というお問い合わせがあれば
該当する方がいれば積極的にご紹介したいと思います。
本稿と同様に、記事にして紹介もしていきたいですね!
まむろ暮らしをキッカケにして様々なご縁が生まれたら、とても嬉しいです。
取材・テキスト・動画制作 家崎耕平
編集 梶村勢至